期待値オトコとオカルトおとこ
キャバクラに期待値はない、と。
キャバクラの売りは当然女の子であり、その女の子に初めて来た客とマジメな恋愛をされたら商売にならないのである。
となると、キャバクラで働く女の子のする行動はひとつ、次回来てもらう、ということである。
メールアドレスの交換も、その微笑みも、優しさも全部。
と、頭ではそう思う。
横を見ると、露出度の極めて高い服を着た女性に対し、にやにやしつつもスロットの仕組みについてえらそうに講釈をたれるオカルトおとこがいる。
絶望的だ、と期待値オトコは思う。
キャバクラにおいて、おそらく期待値は変動する。客の身分によって、持ち金によって。ある特別な人間にだけ、たぶん期待値は存在するのだ。でも、おれらにはない。
このピラミッド型の世界において、おれらは底辺以下なのだ。
「何してる人ですか?」と言われ、思わず「学生です」と言ってしまった。
「そうなんですね。わたしもです」
「……」
その女性は20分ほどで違う席に移っていった。「気に入ったなら指名すれば」とオカルトおとこは言った。
できなかった。
次についた女性にまた「何をしてる人ですか?」と聞かれた。
思わず「海洋生物学者です」と言ってしまった。
「え、すごーい」と言われた。
この店に入って以来、期待値オトコはひっきりなしに安い焼酎の水割りを飲んでいる。完全に酔っ払っていた。ここは何をするところなのだっけ? よくわからなかった。
期待値オトコは知りもしない海洋生物学について、ぺらぺらと喋っている。ウソをついている自覚すらない。
イルカはね、コミュニケーションを取っているんです、と期待値オトコは言う。うんうん、と女性はあいづちを打ってくれる。それが心地よく、期待値オトコは適当なことをそれらしく喋っていく。
ああそうか、と期待値オトコは思う。博打において、ブラフというのは、期待値を上乗せする手段でもあるのか。これは使えるかもしれないな。
いやいや。それはただのウソである。捏造である。
オカルトおとこはにやにやしながら、聞かれてもいないスロットの話を喋り倒し、期待値オトコは経歴詐称の手ごたえを感じ、キャバクラの夜はふけていくのだった。
会計時、オカルトおとこは、たけえ、と言った。
自分のお金で来るのは無理だな、と期待値オトコは思った。
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生まれて初めてひとりで酒を飲んでいるのは、期待値オトコである。
道がある、と彼は思う。一本の道だ。おれはその道をただ何となく歩いてきた。時に立ち止まり、時に迷い、それでも何とか歩いてきた。歩いてきた、はずだ。
……でも、この道の先にあるのは行き止まりなんじゃないか?
期待値オトコは残っていた生ビールを一息に飲んだ。わからなかった。ジョッキが空になり、彼は同じものを注文する。
ほどなくしてビールが届き、彼は再び急角度にジョッキを傾ける。
……ふう。
居酒屋の喧騒は彼の心をほんの少し落ち着かせてくれた。
少しは貯金があるのだ、と彼は思う。でも……
後二週間で消費税が上がる。すでに換金率が変わった地域があるという。このあたりでも下がるのではないか、という噂がある。等価向けの台を非等価で打つことへの憤りを感じる。が、そんなことを言ったら、いつまでこんな風にパチンコ屋で期待値を追えるかなんてわかったものではないのだ。
先が見えなかった。
ああ、パチンコ屋に行きたくないなあ。
そう思うのは、期待値オトコである。
ガンダムは一月の終わりにエンディングを達成して以来、二ヶ月あまり、三連の壁を超えたのは二度三度、後は単発、微負けの連続。
吉宗は数こそこなしているけれど、ATにつながらないボーナスが多すぎて、つながってもすぐ駆け抜けてしまう。
ハーデスは、こんなに簡単に天井行くのか、と思うくらい天井まで連れて行かれるけれど、そこでベルばかり引いてしまい、冥王図柄は揃わず、したがって伸びず、1000枚の壁を越えられず、ゴッドの降臨もなし、未だ勝ちゼロ。
バジリスク絆はBTを引けども引けども全然伸びない。
銭形は一切上乗せしない。
北斗転生は神拳勝舞にシンしか出てこない(イメージ)。
まどマギは穢れの解析が出て以来、該当する台にめぐり合わない。ゾーンは手が出せない。
ラグランジェはczを引けても解除できない(天井間際は別)。
エウレカ2はモード読みが存外難しく、ゾーンが狙いにくい、おまけにcz引けない、解除できない、天井も期待できない。
獣王にいたっては、ここ三ヶ月、400のゾーン、当日300を越えている宵越し600以上、あるいは当日600以上のみを打ち、最高獲得枚数がこれ。
大きく負けることはない。
けれど、大きく勝つこともない。
昨日一昨日と、三十数台打ち、3kほどの負け。
これはまるであれだ、と期待値オトコは思う。ゲーセンのコインゲームで遊んでいるみたいじゃないか。
最近の台で唯一大きく勝ち越しているのはエヴァ決意だが、設置台数の問題と客つきの悪さもあって、数をこなせない。 天国狙いが美味しかった仮面ライダーは姿を消した。去年の主力、ウルトラマンウォーズやカイジ3も同様に。
ベッドの上でうだうだしているうちに、午後を回っていた。
専業としてスロットを打っている以上、こんなんじゃダメだ、と期待値オトコはクビを振る。そして着替えてパチンコ屋に向かう。
この間の一件以来、オカルトおとことは喋っていない。たまにホールで見かけても、話しかける気が起きない。あんなむちゃくちゃな立ち回りで出していたりするのを見ると腹が立つ。
期待値オトコは陰謀論や非科学的なことが大嫌いである。遠隔を疑っているわけでもない。しかしこれだけ勝てないと、何か自分に問題があるのではないか、と思ってしまう。
期待値オトコが重要視しているのは、初当たり確率である。
ほとんどの機種で、初当たりは問題なく取れている。つまり、期待値は追えている。
では何が問題なのか? ヒキ、としか言いようがない。
ヒキとは何か? 期待値オトコは陰謀論や非科学的なことが大嫌いである。遠隔を疑っているわけでもない。しかしこれだけ勝てないと、何か自分に問題があるのではないか、と思ってしまう。
堂々巡りである。
そもそもの話、期待値オトコは負けているわけではない。ただ、大きく勝てないのだ。
ブログでもやろうかな、と期待値オトコは思う。ネットビジネスでウハウハ。パチンコ屋に行かずに生活できるなら、それはそれでいいではないか。
そんな期待値オトコを傍から見ていてオカルトおとこは思う。スロットに対する愛が足りないのではないか、と。
そんなに生き急いで、どこに行くのだろう?
勝ち逃げを狙っているみたいだが、逃げた先に何があるというのだろう?
なぜ、素直にスロットを楽しめないのか?続きを読む
オカルトおとこは困惑していた。
ここ二週間、何をしても勝てなかった。
花の慶次の修羅50ゲームスタートで400枚というのもあった。
ガンダムで通常時に最強ベルというのもあった。
同じくガンダム赤七で3連というのもあった。
何かがかみ合わなかった。
また、スロットを打つなかで、トレードをするなかで、
はみ出たものを一所懸命につづったものです。
基本的に毎日更新してはいますが、
毎朝グビグビ飲めるというほどあっさりした、
また、健康的な文章ではありません。
油ギトギトのラーメンというほどではないと思いますが、
胸焼け、食あたりを起こす可能性がある由、ご留意くださいますよう。
また、コメントは大歓迎です。
引用ももちろん大歓迎ですが、引用元の記事を明記していただけると幸いです。
それでは今日もはりきってまいりましょう! どこへ? チャートの世界へ。
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