(フィクションだと思って読んでください)
1997年。ぼくは高校2年生だった。16歳。あるいは17歳。当時のぼくにとって、それが若さとは思えなかった。目の前の世界は今でしかないのだ。当時も、今も。
が、部屋の中でパソコンの前から動かない(動く必要があまりない)2022年の今とは異なり、1997年のぼくは家にいたくなかった。
とにかくもう、学校や家には帰りたくなかった。自分の存在が何なのかわからず震えている……。尾崎豊(文字にしてみると、尾崎の尾ってこんな文字だったかしら、といつも思う)を路上で口ずさむ高校2年生だったのだ。
はたして、家に帰らずに生活することは可能なのか?
……知り合いの家を転々とすればいーんじゃね? と思いついた。
はた迷惑な人間とは思うが、その日初めて会った人の家にも積極果敢に泊まらせてもらった。もちろん、親と同居している女子の家にあがりこむのは無理難題だったから、泊まらせてくれるのはほぼほぼ男子の実家だったが、ある日、同い年にもかかわらず、一人暮らしをしている女性を紹介されたことがあった。
K王線のSという駅の近くで、そのアパートにたむろしていたのは、だいたいみんな悪いやつだった。
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