「これ、期待値3000円はあるぜ。おまえ最近やばいんだろ? 打てば」と期待値オトコは言った。


「いや、いいや」とオカルトおとこは返す。「おれ、今日から頭使ってスロット打つことにしたから」


「は?」期待値オトコはオカルトおとこが何を言っているのかさっぱりわからなかった。「おまえ、これ打たなくていいの?」

「いい」オカルトおとこは首を振った。

「じゃあおれ打つわ」

期待値オトコは期待値3000円の台に着席し、打ち始めた。


オカルトおとこはおもむろに期待値オトコの隣、期待値およそマイナス2100円ほどの台に座り、千円札をコインサンドに入れ、出てきたコインを台にきれいに50枚収めると、何と、頭でレバーを叩きだしたのだった。


「おまえ、何やってんの?」期待値オトコは開いた口がふさがらないといった表情で聞いた。


「頭使うって言っただろ?」


オカルトおとこは我が道をひたすら突き進むラオウのような顔でレバーに向かって黙々とヘッドバンキングしている。


期待値オトコはこんなやつの隣にいることがたまらなく恥ずかしいが、期待値の手前、黙々と打つしかない。


注意しようにも注意できない店員が後ろでくすくす笑っている。


こうして今日もホールの時間はじんわりと流れていくのである。


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