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犬を散歩させていたところ、犬が道の右端でフリーズした。

眼前には、通行人の姿があった。犬は、自分の歩く道を変えたくない。そして前から接近してくる通行人も自分の歩く道を変えたくない。

通行ルートを変えたくない犬を見て、通行人の御仁は「チッ」と舌打ちした。

ぼくは飼い犬を連れた大人(のはず)なので、「すんません」と言って、リードを引いて道を譲った。喧嘩にはならなかった。よかったよかった。犬が道を譲りたくないことを態度に出すのは、当然飼い主の責任なのだから。めでたしめでたし。のはずである。

……だけど、どういうことだろう。このモヤモヤは。

ぼくの胸のうちで渦巻く感情を正確な日本語に翻訳してみると、「チッ? だと?」である。

おそらくこの感情は、理性では制御しようがない、太古から連綿と刻まれてきた由緒正しき「負けず嫌い」である。

自分の感情をストレートに言える人、言えない人がいると思うが、ほとんどすべての人間(おそらく生物)は、道を譲りたくない。

我慢を強いられる時間は長く感じるものだ。

10歳の1分と、60歳の1分が同じはずがない。ということは、我慢をする体感時間という点で言えば、犬の方がずっとつらいのだろう。彼らは人間の4倍以上のスピードで人(犬)生を駆け抜けるのだから。

ぼくは一息吐いて、犬をヨシヨシして、道を進んだ。

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