小説であります。

パチスロは終わったとみんな言うけれど
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 が、やりたいやりたいやりたいやりたい騒いでる。しかし下半身は、無理です無理です無理ですと首を振る。酒を飲むからタタないのだろうか? だとしても、アルコールの影響はまだまだ続く。ちょっと今は難しいので、アルコールが抜けたらまたお願いします。そう言って、リノは待ってくれるだろうか。

 いや、その前提がおかしいことに、おれは気づかなければいけない。シラフでは、おれはリノとここまで来れていない。来ないのではなく、来れない。こうやって、アルコールの恩恵をガッツリ受けてるくせに、アルコールのせいにするのは卑怯だ。そうだ。おれは、卑怯だ。
「ええと、あの、ごめんなさい」謝った。
「何が?」リノは、不思議なものを見るような顔で言った。
「ええと、その……」
「たたない?」
「すんません」
「気にしないで。そんな、十代の女子じゃないんだし。タバコ吸ってもいい?」
「はい」
 リノは、今まで我慢していたのか、あるいは急に吸いたくなったのか、ハンドバッグから、タバコを取り出して、火をつけた。裸のまま、ラブホのベッドに腰をかけて。


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「ブッキー、あのさ、ヤマさんの遺言があるんだけど」
「遺言?」
「でもこれ、聞いちゃったら、ブッキー的にはめんどくさいことになると思うけど、聞く? 聞かない?」
「聞かないという選択肢があるなら」
「じゃあ、これを見てから決めて」そう言って、リノは煙をふうと吐き、タバコをもみ消した。
 
 おれは、大学を辞めて以来、自分の頭で何かを考えて決断をしたことがあっただろうか?

 期待値というのは、それこそ足し算、引き算、掛け算、割り算ができれば、特に悩むことも、考えることもなく、優先順位が自動的に決まるアルゴリズムみたいなもので、目標というか、方向性はいつも、ヤマサが決めた。飲みに行こう、風俗行こうもそう。あっちにいいパチ屋がある、こっちにいいイベントがあるという情報を入手するのもヤマサ。おれはそれに付き従うだけだった。

 自分が考えたり、悩んだりしたところで、それがお金に直結することはほとんどないわけで、あの子かわいいなやりたいなみたいな欲望も、それを行動に移したところでうまくいかない確率の方が高いわけだし、だとすれば、感覚だとか感情だとか欲望は、期待値のマイナス要因でしかなく、端的に時間の無駄だと思っていた。

 リノが手に持っていたのは、一枚の写真で、そこに映っているのは、お猿のお人形を頭に載せた女の子だった。
「マサコちゃん」と、リノが言った。 

つづく
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