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「リール一周のスピードで 第三章」~山賊スロット1~


まえがき


 小僧、牙大王、デビルリバースの山賊団は、獲物を求めて移動していた。
 一軒目、期待値は見つからない。牙とリバースは、何をどうしていいものか、わからない。ただ、小僧の後を追うだけだ。小僧は、前日のゲーム数をチェックするものの、打っていいかどうかの判断ができない。資金は10万しかない。実際問題、この程度の資金では、3人のメリットはいかせない。資金がパンクしてしまえば、そこで終わり。たとえば、ミリオンゴッドのウマい台があったとしても、5台連続で不ツキに振れれば破産してしまう。小僧に求められているのは、資金と人員のマネジメントである。素人というのは言い訳にならない。

「どういう台がいい台なんですか?」みたいなことを、助手席に座るリバースが聞いた。
「期待値がプラスな台を打つんです」後部座席の小僧が返す。
「期待値って、何ですか?」
「一番簡単なのは、天井ありますよね。それに近い台だけを打てば、負けないですよね」
「そんな都合のいい台がありますかね?」ハンドルを握る牙が言う。
「たとえばですけど、天井が1000ゲームの台で、前日が300ハマっていて、当日400ハマっているみたいな状態だと、ぱっと見だけじゃわからないじゃないですか」
「さっきの店にはそういう台はなかったんですか?」今度はリバースから質問がくる。
「いや、天井が1000ゲームで、前日ゲーム数が600くらいの台はあったんですけど、もしリセットがかかってたらと思うと、攻められなかったんですよね」
 小僧の判断は賢明といっていい。今の彼らには、可能性を追っている余裕はないのだ。
「色々あるんですねえ。でも、おれらは気にせんと、ガンガンいってくださいね」
「はい」と答えたはいいが、小僧は悩んでいた。これでは3人いる意味がないではないか。といって、この資金を33000円ずつ3人で分けたとしたら、ただでさえ狭い選択肢がさらに限られてしまう。こうしている間にも腹は減り、腹を満たそうとすれば、その分資金は減る。時計を見ると10時半。

 小僧は、もっと客付きのいい店を探し、そこで期待値が落ちるのを待とうと決めた。


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 そこは、全国チェーン大手のパチンコ店で、パチスロの台数も多く、ある程度の客付きもあった。牙とリバースに、店中のパチスロのゲーム数(バジ絆のスルー回数など)をチェックしてください、と頼み、自らも店を徘徊した。
 そのうちに、牙大王が、この台はどうですか? と聞いてくる。悩むまでもないゲーム数だった。小僧は、「ありがとうございます、打ちます」と言って、着席。
 その台を打ち始めると、今度はデビルリバースから声がかかる。
「この台はどうですか?」
「打ちましょう。AT終了後、即やめでお願いします」と言って2万円を渡した。
 そのうちに、牙大王からも声がかかる。
「お願いします。AT終了時の画面を写真に撮って報告してください」と言って、牙にも2万円を渡す。
 資金が減っていくことで、レバーを叩く小僧の手はこわばった。これで負けたらどうしよう? いや、考えてもしょうがないことを考えても意味がない。打つという判断はおれがしたのだ。結果を待とう。いや、しかし……
 そんな葛藤を続けること数分、小僧の台が天井に到達した。小僧は考えるのをやめ、片側の目に映る世界だけに集中した。

 山賊生活で培ったものだろうか、牙大王とデビルリバースの嗅覚はなかなかのものだった。彼らは次々に打てそうな台を見つけてきた。そのうえで、小僧に判断をあおぐ。ある程度の浮きが出た時点で、交代で昼食を取った。3人の急増「山賊団」は、悪くない効率で期待値を追ったのだった。

「勝ったんか?」たけさんが言う。
「はい」小僧がうなずいた。
「どれくらい?」
「3人で、25万と少しです」
「……何?」
 歓迎会、あるいは山賊団の結成式という体で、居酒屋「風」で飲むことになった。どんな理由でも、たけさんは大勢で酒を飲みたいのだ。
「おごってくれるんやな」と言うたけさんをなだめ、割り勘にしてもらう。今は資金が必要な時期なのだ。
 その代わりという感じで、たけさんはりんぼさんを呼んだ。りんぼさんは近くにいたらしく、数分でやってきた。
「おお、りんぼん。こっちこっち。小僧と、この二人で、何とか団とかってのを結成することになったから、よろしくな」
「何とか団?」
「山賊団です」黒い眼帯をつけた小僧が言った。
「山賊団?」りんぼさんは苦笑した。「小僧くんが首領なの?」
「うーん、名前的には、牙大王さんですかね」
「え、おれ、すか……」今度は牙が苦笑する番だった。
 ひとしきり飲み、ひとしきり食べると、いつもは酔いつぶれるまで飲みたがる小僧が、明日もあるんで帰りますか、と言った。

 翌日も、山賊団は、たけさんの軽自動車に乗って、大手チェーン店に向かった。彼らがしているのは、誰かが残した期待値を拾って回る「ハイエナ」と呼ばれる手法であり、その意味では、彼らはまさしく山賊団であった。

 牙大王とデビルリバースにとって、何かを奪うという作業は、これまでもしていたことだった。スロットも好んで打っていた。違うのは打ち方であり、明確な目標が与えられたことだった。
「なあ、こんな風に仕事してたら、クビにならなんかったんかな」
 牙は、一仕事終えた後のビールを片手にリバースに問いかける。
「かもな」相棒がうなずく。
「調子に乗るなよ」と言って、たけさんが笑った。


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 松山市に現れた山賊団。彼らがチームとして機能しているのは間違いなかったが、それ以上にヒキが神がかっていた。店を発見してから2週間。山賊団は打った期待値を優に上回る額の金額を手にしていた。
「ちょっと持ってるのが怖くなってきたので、ここまでの分を計算してみますね」札束を手に小僧は言った。「……ええと、100万と3千円浮いてます」
「すごいな」と言って、たけさんが感心したように腕を組んだ。
 小僧は、デビルリバースの手に33万4千円を渡そうとした。
「これは、お二人がしたことの対価です。受け取ってください」
「おまえらがいらんのやったら、わしが使っちゃんけん、くれや」たけさんはニヤリと笑う。
「あの、たけさん、これ、預かっててくれますか?」リバースが真剣な表情で言った。
 この頃には、デビルリバースも牙大王も、たけさんに対しては、話しかけられるくらいになっていた。
「ええけど、知らんうちに減ってても文句言うなよ」
「はい」
 当座の資金を残し、牙とリバースは、たけさんに50万円を預けた。山賊団立ち上げの首尾は上々だった。しかし彼らの行動が、店側の人間の目に留まるのは時間の問題だった。禁止行為をしているわけではない。とはいえ、大手チェーン店は、彼らを排除することをためらわなかった。
「あなたたちは、プロですね」小僧たちは、スーツを着た男にそう言われた。「あなたと、あなたと、あなた、ちょっとこちらへ来てもらえますか?」
 連れて行かれた先で、山賊団は出入り禁止処分を申し渡された。帰ってきた3人は、出禁になっちゃいました、と言って笑った。

 山賊団は、止まらない。スロットで得たお金を使い、スマートフォンをデビルリバース名義で購入し、小僧が持った。牙も、リバースも、一々小僧に聞きに行かなくても、自己判断で打つ台を決め、グループラインで共有した。パチンコ屋は幾らでもあったし、何かしら打つ台はあった。しかし、期待値を狙う人間は、彼らだけではなかったのだ。


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 おじさんの背中からは、やめたいオーラが出ていた。もはや正面を向いて打っていられないくらい、体がねじれている。気持ちはどうあれ、体がやめたがっているのだ。後は時間の問題だった。デビルリバースは、そのおじさんが打っている、ハーデスという台のハマリ台を狙っていた。台が空いたのは、1288ゲーム。瞬時にリバースは下皿にスマートフォンを置いた。この台を打つ権利は、彼にあるはずだった。が、ほとんど同じタイミングで、横から手が伸びてきたのだ。ハーデスの下皿には、リバースのスマホと、誰かのマルメンライトのボックスが、ともに自己主張をしている。

 台取りでもめるくらいなら、ゆずっちゃってくださいね、と小僧は言っていた。小僧の意見は3人の統一見解のはずで、統一見解を優先させるなら、退くべきである。が、実際にこの状況に立たされると、口惜しい。おれが、置いた。おれが先に置いたのだ。この台の優先権はおれにあるのだ。決して安い期待値ではない。リバースは、こっちが先に置いたから、と言った。
「はあ?」マルボーロメンソールライトの男は立ち上がって言った。「隣で打っとったんやから、おれが先に置けるに決まってるやろ」
 リバースは、チラとその男の打っていた台のゲーム数を見た。1044ゲーム。別にそっちを打ってもいいかな、と思った。
「じゃ、いっすよ」と言って、リバースは、マルメンライトの男が立ち上がった席に座ろうとした。が、マルメンライトの男は、自分の台からコインを移動させることなく、どこかに向かおうとした。
「おい、待てや」
「は? まだ何かあんのか?」
「掛け持ちは禁止やろが」リバースは眉間にしわ寄せてにらむ。
 と、仲間らしき男がやってきた。
「なあ、こいつが因縁つけてくるんやけど」マルメンライトの男は、リバースをあざ笑うような態度で仲間に言う。
「因縁ちゃうやろ。掛け持ち行為やろ。店員呼ぶか?」
「呼びたかったら呼べや」マルメンライトが片方の口角を上げながら言う。「こっちはもう打つやつおるやろ。おまえも所詮ハイエナやろ。何をぬかしとんねん」
 ぎりぎりと歯をくいしばった。
 こぶしに力をこめた。が、小僧の顔がちらついた。
「邪魔やからあっち行けや」マルメンライトのツレがひらひらと手を払った。
 こぶしを握り締めたまま、歩き出したはいいものの、リバースの心臓はドクドクと鼓動していた。ゆずってしまったことの後悔。情けなさ。苛立ち。アドレナリンの分泌は抑えられなかった。

 スロットのシマを一周するたびに、マルメンライトの男とそのツレが目に入る。気持ちを切り替えたいが、スロットのシマを一周するたびに彼らの姿が目に入り、しかも連チャンしている。
 あの台はおれが打っているはずだったのに、というのは、まったく意味のない仮定だ。1万数千円で天井に到達。プレミアムオブハーデス100ゲーム終了。自分が打っていたら、負けていたかもしれないのだ。気持ちを切り替えて、別の期待値を追うしかない。しかし、リバースは切り替えられないでいた。

 そのうえ、打つ台、打つ台で、ヒキ負けた。1/2、1/3という確率が、自分の都合の悪い方に転がる。何が悪い? おれが悪いんか?
 ほとんどすべてのスロッターは、自分の内面と、行動の結果とを因果関係で結んでしまう。鼻をほじりながら打っても、正座して打っても、確率が変わるわけではない。ヒキ強の日もあれば、ヒキ弱の日もある。ヒキは、天候のようなものなのだ。永遠に晴れることはないし、永遠に雨が降り続くこともない。気にすべきは、自分の力でどうにもならない天候ではない。だから、これはすべてのスロッターが通るべき通過儀礼である。しかし通過儀礼のただなかにいるデビルリバースは、葛藤していた。
 クソ。腹減った……
「打つ台ないんで、飯食ってきてもいいですか?」リバースは、グループラインを送った。
「了解」と牙。「オッケーです」と小僧。
 近くのうどん屋で、うどんをすすっている間も、イライラは収まらなかった。トッピングを乗せに乗せ、おにぎりと赤飯まで追加したが、収まらない。素直に仲間に打ち明けてしまうべきなのだろう。が、リバは、自分の不始末は、自分で何とかしなければいけない、と考えた。
 会計を済まし、パチ屋に戻ると、リバースにとって残酷な光景が広がっていた。マルメンライトの頭上には、3箱カチカチのコインが鎮座、なおも連チャン中。残りGGゲーム数が、500を超えている。
 すう。はあ。すう。はあ。深呼吸をしながら通り過ぎようとすると、マルメンライトが振り返り、目が合ってしまった。マルメンライトがニヤリと笑う。キレそうになるのを思いとどまったのは、小僧の姿が目に入ったからだろうか。リバースは男を無視し、小僧のところに向かった。
「飯まだでしたよね。代わりましょうか?」
「お願いしてもいいですか」と言って、小僧は席を立った。
 小僧が打っていた台は、1000枚ほどのコインがあり、軽快に連チャンしていたが、リバースが座った途端に、終わってしまった。
 デビルリバースは肩を落とし、ジェットカウンターにコインを運んだ。


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 ポケットに入っている紙幣を見ると、5万と少し使っていた。レシートは、小僧の台の分も含めて4枚、全部合わせても2000枚に満たない。牙大王の姿を探すと、天井恩恵のあるハマリ台でハマリ中。声をかけられる状態ではない。マルメンライトの男たちがいると思うと、店回りをする気になれない。といって、パチ屋の中で他にすることはない。
 ソファに座って待って、戻ってきた小僧にレシートを渡し、今日はダメダメですね、と言った。
「そんな日もありますよ」と言って、小僧はスロットのシマに向かう。
 リバースはしばらくソファに座ったまま、呆けていた。そのうちに、牙がやってきた。
「今日はあかんな」
「なあ、牙」十年来の親友を、平然と”牙”呼ばわりする、デビルリバース。そのことを平然と受け止める牙大王。
「どした?」
「今日のおれ、ヒキが弱いみたいやけど、どうしたらええかな」
「そんな日もあるやろ」小僧と同じことを牙は言った。
 と、ハーデスのシマにいる小僧の姿が目に入った。小僧の前方にはマルメンライトの男がいて、何かを話している。考えるよりも、体が反応した。
「何でもないですよ」と、小僧は言った。
 いや、何もないわけはないのだ。小僧が座ろうとしていた台に、マルメンライトの男のツレが座っているのだ。幾分冷静だったのは、牙だった。店員を呼び、こっちが先に取った台を、横取りされた、ということを伝えた。
「何やおまえクラすぞ? こら」マルメンライトの男のツレは立ち上がり、牙をにらんだ。しかし牙は挑発には乗らず、やってきた店員に、台を盗まれた、と主張した。
 が、店員が来たところで、事態が変化するわけではなかった。まだ20代そこそこだろうアルバイト店員は、どちらの意見を聞いていいかわからずに、おろおろするばかりだった。
 小僧、牙、リバースの3人と、マルメンライト、マルメンライトのツレの2人。その間のアルバイト店員。
「もういいです。行きましょう」と、小僧が言った。
 別の店に行こう、というのが小僧の意見だった。反して、牙とリバースはあいつらを追い出そうと主張した。数の上では、2対1。が、牙とリバースは、小僧の意見に逆らうことができない。

 レシートをすべて特殊景品に交換し、現金に交換した後も、収まらないリバースは駐車場で足を止め、小僧に向かって言った。
「さっきおれ、1288ゲームのハーデスを取ったんです。その一瞬後くらいに、さっきのやつがタバコを突っ込んできて、でも、あいつが打ってた台が1044だったから、もめるくらいならそっちでもいいかと思って、どいたんですよ。したらあいつ、自分の台も1288の台もキープして、仲間を呼びにいって。あのとき退かなかったら、小僧くんが取った台に後ろから手を伸ばすこともなかったんじゃないですか? そういう意味では、おれが悪いのかもしれないですけど……」
「難しいですね」神妙な面持ちで、小僧は言った。「おれたちにしろ、あの人たちにしろ、自分たちの正当性みたいのを主張することはできないと思うんですよ。そもそもその台も、自腹を切ってハーデスを1288ゲームまで打ってくれた人がいたわけじゃないですか。それは別に、おれらのものでも、彼らのものでもない。たまたま期待値がある状態まで打ってやめた人がいたってだけで」
 小僧が言いたいことは、しかしリバースにはうまく伝わらなかったらしい。
「でも、悪いのはあいつらの方ですよね。腹立ちません?」
「パチ屋で起こることにいちいち腹を立ててたら、スロットなんて打てないですよ」小僧はどこかで聞いたことがあるようなことを言った。「それとも、別行動しますか?」
 リバースは、言おうとしていた言葉を呑み込んだ。そして、軽自動車に乗って、別のパチ屋を目指した。


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 3人で15万強。山賊団初の大負けに、リバースは荒れていた。大ジョッキのビールを飲み、飲み、骨付きのチキンを食らった。山賊の宴会は、なるほど山賊らしかった。
「たけさん。おれは、店のルール守ったんですよ」
「おまえらがルールねえ」たけさんは、塩辛をつまみに愛媛の地酒を飲んでいる。
「でもね、たけさん。マジで、あいつら酷いんすよ」リバースは、酒が入った人間特有の気安いしゃべり方で言った。「小僧くんが許しても、おれは許せないですよ。マジで」
「どの口が言うんや」と、たけさん。
「でもまあ、たしかに酷い連中やったな」助け舟を出したのは牙だった。
「やろ?」
「だから、どの口が言うんや」たけさんがあきれ顔で言った。
「師匠だったら、こういうときはどうしますか?」ここまで黙っていた小僧が口を開く。
「最優先事項は何かって話じゃねえの。面子が大切なら喧嘩すればいい」
「……」リバースは、骨付きチキンを手にしたまま固まってしまった。
「やっぱり、期待値が目的の場合、無視するのが最善策なんですかね?」
「無視しようが無視しまいが、椅子取りゲームをしている以上、衝突は避けられない。目の前の期待値だけが目的なら、絶対に退かない。退いちゃいけない。マイホにするような店だったらもめないこと、目立たないことを優先しなくちゃいけない。そもそも、そんなやつがいる店をマイホにしない。というか、マイホって概念じたいがリスク要因だから、常に選択肢が複数あるってのが理想か」
 理想を語るのは簡単だ。自分ができる/できないを無視していいのだから。
「……」山賊団は黙ってしまった。
 本当に、その2人を排除したかったら、店員ではなく、店長、または社員に訴えなければ。が、その排除理由は、そのまま、山賊団にも返ってきてしまう。労力を考えると、別の店を探す方が得策だろう。そもそも、デビルリバースは、掛け持ちだと非難しているが、小僧も牙もリバースも、隣に期待値のある台が空いたら、台をキープし、仲間に告げるだろう。やっていることは変わらないのだ。
「この辺のパチ屋は全部回ったの?」
「だいたいは行ったと思うんですけど」と、小僧は答えた。
「グーグルマップでもピーワールドでもいいから、それで、通える範囲に何軒あるか調べてみ。ジグマにしろ、ハイエナのルートを作るにしろ、そっからだろ、まずは」
「やってみます」と言って、小僧はデビルリバース名義のスマホを出した。
「ジグマって何ですか?」牙大王が訊いた。
「ひとつの店でしのぐっていうスタイルのこと」
「将棋の穴熊囲いからきてるんですかね?」
「どうだろ。地中から動かない熊みたいなことだと思うんだけど、案外そうかもしれない」
 リバースは、何かを考えているような顔で、骨付きチキンを食らっていた。
 デビルリバースの中で騒いでいるのは、子どもっぽい反発心、あるいは嫉妬心だろう。そんな自分にも腹が立っている。だからこそムキになる。今日のことだって、マルメンライトの男が負けていたら、ここまでムキになってはいないはずだ。
「パチンコで勝つってのも大変なんやな」たけさんがのんびりした声で言った。そしてぐびりと日本酒を飲んだ。 


つづく
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作者ひとこと

実際問題、軍団が、自分のいるパチ屋に現れたら、たまったもんじゃないですよね。ただ、軍団が常駐できるような店は、何かしらの理由があるはずです。稼働率なのか、リセット、または設定配分のクセなのか、平均設定なのか。彼らはその夢のようなパチ屋で何を見つけるのでしょうか。次回は7/19頃、更新予定です。