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筒井康隆「創作の極意と掟」を読む。

小説を書く者にとっていちばん大切なものは妄想ではないかと思うのだ、と筒井は言う。妄想が軽蔑されるのは、多くの人が自身の妄想を顧みて自分で恥ずかしくなるからだ。(略)何度か書いたことだが、だいたい妄想には実にアホなものが多い。どんなアホなものかということは、あなたがパチンコをしている時に思い浮かべることを思い出してみればいい。哲学的な思考や数学理論を思いめぐらしながら打っている人はあまりいない筈だ。そのアホな考えたるやあまりにもアホなことなので、時おり身もだえながら打っている人もいるくらいだ。何百人もの人がパチンコをしながら考えているそのアホのエネルギーを全部集めたとしたらそれはもういかにアホか、想像もつかないものがある。そのようにあまりにもアホであるがゆえに、たいていの人はそれを忘れ去ってしまう。だが作家にとってはその「あまりにアホなこと」を考え抜くことこそ大切なのである。

アホなことを考えることに疲れた私は、スロットを打ちながら、スマートフォンの画面で本を読んでいる。バジ絆ばかり打っているのは、読書をするのに適している(目押しがいらない。音で演出がだいたいわかる)という理由もある。

先日は、読者の方に教えてもらった「狼と香辛料」を読んだ。パチ屋にいながらにして架空の世界に入り込み、ストップボタンをトントンしながらも、脳の中ではロレンスのロマンスに浸っていた。中世のヨーロッパ風の世界、物語の主人公ロレンスは、行商人という、ひとところにとどまることのできない、いわば旅打ちしかできないスロッターのようなさすらい人である。対して、旅路のパートナーとなるホロは狼(の化身)。見た目は、耳と尻尾の生えた麗しき十代の女子。どん兵衛のCMに出てくる吉岡里帆さんみたいなイメージか。このホロさん、期待値が嗅ぎ分けられるというような特殊技能があり(他人のついている嘘がわかる)、一人称は「わっち」、どうしてか、遊女が使うような言葉を使う。主人公は、(その品物が豊富な)A町で何かを買い、荷馬車に品物を積め、移動し、(その品物が不足している)B町で売るというような、古式ゆかしい貿易をしている。ホロと出会い、旅行をともにすることを決めたロレンスのもとに、思わぬ儲け話が舞い込む。

バジ絆を打ちながら、ロレンスの物語と、伊賀と甲賀の物語を往還しているうちに、スロットの勝ち負けが決まる。勝つ負けるに付随するストレスは物語を読むことで相対化される。勝っても負けても期待値がたまっていく。素晴らしいことである。

イルでいる秘訣知ってる? パチ屋の中で新たに読み始めたのは、桜坂洋「All You Need Is Kill」
主人公はソルジャー。死んでも、死んでも、生き返って戦場に戻る(戻らざるを得ない)兵士である。伊賀と甲賀の忍者たちが土に還っても、我々が紙幣を投入し、BTを引けば、戦わざるを得ないように。体の負担やリアルの度合いは違うが、やっていることの本質は、スロッターと変わらない。敗れても、敗れても、パチ屋に向かう。孤独な兵士に幸多かれ、と願いながら、今日もパチ屋で読書に励む。
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