「わたしは不幸だ」という言葉は理解できない、なぜなら本当に不幸な人間には「わたしは不幸だ」とは書けないからだ。フランツ・カフカ

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「不死鳥の灰」
♯54 Differences between children and adults

まえがき
 
    

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「今のおれが今のおまえとこんなんするのはフェアじゃない気がする」おれは言う。
「何、そのキザな感じ。また変なこと考えてるんちゃうやろな」
「変なこと?」
「あんた、こないだもわけわからん理論で丸め込んでうちの大好きなアイスを半分食べたやろ」
「知らん」
「食い物の恨みは恐ろしいねんで」
「ほな好きなだけ買うたるわ。豚さん」
「何でそんなこと言うん」
「……何でやろ」自分でもわからなかった。

 おれは砂浜に寝転がった。真上に空があった。雲が流れていた。手を伸ばすとそこに氷野のふとももがあった。
「大人と子どもの違いってわかる?」おれは言う。
「年齢」
「違う」
「支払い能力」
「違う」
「責任の有無」
「違う」
「ほな何なん?」氷野は言う。
「ないものねだりをするかどうか」
「何て?」
「ないものねだり」おれは言った。「子どもは足りないものを欲しがる。大人は自分にあるものをベースに思考を組み立てる」
「あんたはどっちなん?」
「大人に決まってるやろ」
「……ほな、何でうちのふともも触ってんの?」
「これは無意識の意識や」
「アホちゃう?」
「アホや」
 背の高い鳥が空を渡っていく。そのはるか上空を飛行機が飛んでいく。
「なあ、蓮、タバコちょうだい」
「はい」と言ってクールマイルドを氷野に渡した。「おれもうやめるから、全部やるわ」
「何があったん?」
「タバコは毒だぜ」
「……何なん自分?」
 氷野は煙を吸い込むと、リンゴを奪われた直後の猿みたいな表情で煙を吐いた。「あんたがそんなん言うからいつもより美味しくないやん」
「吸いたいって言うたのおまえやろ」
「こんなんは一緒に共有するから美味しいんやろ」
「おれは犯罪行為には加担しません」
「何なん……」氷野は口を尖らす。
「1999年の氷野さん。お元気ですか?」
「お元気ですよ」
「1999年のおれは、どんなやつですか?」
「変子ですよ」
「21世紀のおまえは、結婚してるよ」
「は? 相手は?」
「それは言われへん」
「……ホンマにフェアじゃないな」

つづく
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"Study for a Running Dog"


「走る犬のための習作」
フランシス・ベーコン1954年
      
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