神を見たものは死ぬ。言葉の中で言葉に生命を与えたものは死ぬ。言葉とはこの死の生命なのだ。それは「死がもたらし、死のうちで保たれる生命」なのだ。驚嘆すべき力。何かがそこにあった。そしていまはもうない。何かが消え去った。

モーリス・ブランショ 「La part du feu」

0 study after velázquez 1950
「不死鳥の灰」
♯42 Dark&Long

まえがき 
    

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 眠れない。大き目のグラスに氷を入れて、バランタインファイネストをどぷんと注ぎ、同量のサントリーの天然水を入れて飲み干した。歯を磨いて、ベッドに入る。眠いはずなのに、眠れない。

 ここは古典的に、羊の数を数えてみよう。いざ、ひつじん。何だこのくだらない思考は……
 ダメだ。ベッドから起き上がり、グラスに氷を入れてバランタインを注いだ。指でくるくると氷を回し、口に近づける。

 楽になりたいという気持ちが 、楽になれない主要因だった。会いたいという気持ちが不快だということに初めて気づいた。その気持ちはひとりでいるときに発生する。会いたかった人といるときは発生しない。すでに会っているからだ。つまり、会いたいという気持ちを解消するには、その気持ちにピンポイントにマッチする他者が必要で、しかしその他者に会った瞬間に、会いたかった自分は消えてしまう。消えたはずの気持ちは、その第三者がいなくなった後で復活する。終わりがない。
 ゆえに、永遠の愛を誓えない。誓ったとしても、守れない。人間の感情の設計ミスだ。もちろん、神の意志すら感じるこの設計ミスのおかげで、人類が子々孫々と種を保存し続けてきたのは事実だろう。
 能弁な自意識も、クソめんどくせえ、という苛立ちも、久しぶりだった。中学生のような不安。もてあます感情。アルコールがそれらを回す。ぐるぐる回す。ぐるぐる回っている。
 白取絵美にしょうもないラインスタンプを送った。無論、既読マークはつかなかった。

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 午前3時。ノートパソコンを開く。エロ動画を探している間、時は加速する。ズバビタのAV女優を発見し、興奮さめやらぬ頭で考える。誰に似てるんだろう?
 そんなことどうでもいいだろ。さっさと抜いて寝よう、と思うものの、ダメだ。……またぞろ脳内の迷宮に迷い込んでしまう。
 加速した時が、間延びをはじめる。ハナビという台で熱いのは遅れで、大花火は間延びだった。ハナビの場合、テロロリンというスタート音が、ンテロロリン、と一拍遅れると、チェリーオアボーナス。熱い。大花火は、テロロリンというスタート音が、テロンリンという感じで間延びすると、チェリーオアビッグ。激熱である。

 おれは、こんな夜中に下半身をむき出しにして、いったい何をしてるのだろう?

つづく
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タイトルバック

Francis Bacon" Study after Velázquez"

「ベラスケス後の習作」
フランシス・ベーコン 1950年


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