いまや人間はじぶんが偶発事であり、意味のない存在であり、理由もなく最後までゲームをやりとげねばならないことを実感しているのだ。

フランシス・ベーコン

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「不死鳥の灰」
♯3 the supernatural

まえがき 





 中一で自殺した男(田所当真)と、その男のせいで学校中から無視された男(田所類)が、12年ぶりに再会し、早朝の道を並んで歩いている。こんな説明しても、誰も理解してくんねえよな、と思いながら、田所類は空を見上げた。うう……さみい。
「ねえ田所くん」
「だから田所が田所って言うなって。わかりにきーだろ」
「誰に?」
「俺に」
「君は変わらないね」
「あのさあ、俺、被害者よ? よくそんなこと言えるな」
「君はさっきから普通に話しているけれど、僕は見るのも聞くのも喋るのも12年ぶりなんだよ。若干13歳の精神なんだ。もう少し優しく言えないもんかね」
「わかった」田所類は言った。「一発ぶん殴らせて。それでチャラにしてやる」
「いいよ」田所当真はうなずいた。「暴力で解決したければすればいい。ほら。12年ぶりに街角を歩く13歳の精神の僕の顔を殴りたければ殴ればいい。だけど僕の心は屈しないよ」
「……もういいや。俺は帰って寝るから、おまえは魔法のレベル上げ頑張れよ」
「田所くん、僕はこの世界に君しか頼ることができる人間がいないのだよ」
「魔法使いなんだろ。余裕だろ」
「魔法を使ったのは、ばあちゃんであって、僕ではない」
「そこの角曲がったら、おまえが昔、頭部を盗んだお地蔵さんがあるから、お願いしてこいよ」
「オカルトだね」
「オカルト? どの口がそれを言うんだ? おまえの存在自体がオカルトだろ」
「僕だけだったらいいけど、僕以外にも僕がいるんだよ」当真は言う。
「は?」
「僕はたぶん一人じゃない」
「はあ?」
「君がばあちゃんから受け取った遺骨はほんの少しだっただろ? ドラえもんのオイル理論じゃないけど、僕は、わずかな遺骨から出てきたから存在感が希薄なんだ」
「ってことは、もっと強烈なおまえがいるってこと?」
「たぶん」
「とんこつスープみてえだな」類は言った。
「臭い? 我慢して。とにかく今、この世界には僕の仲間は君しかいない。わかったかい? キョーダイ」
「兄弟?」
「僕の体は実体じゃない。人間は死んだら生き返らない。当たり前だよね。僕らは二心同体なんだよ」
「ニシンドウタイ?」
「たとえば」そう言って、当真は電信柱をグーで殴った。
「いってえ」と言ったのは類だった。
「ね?」
「……痛……どういうことだよ?」
「何て言えばいいのかな。僕と君は、支社と本社みたいな関係なんだ」
「支社と本社?」
「そう。僕が支社。君が本社。僕の負債は本社が引き受ける。まあ、社長というくらいだから、理解できるとは思うけど」
「……何か、そんなストーリーの話なかった? ひとりはダメージをくらう。ひとりはダメージをくらわない、みたいなの。マンガか何かで」
「そうかもね」こともなげに当真は言う。「ばあちゃんが魔法を行使するにあたって影響を受けたのかもしれない。ばあちゃんはSF好きだったし。僕は可愛い孫だからね。その条件は吟味したはずだよ」
「……」
「ただ、君自身わかってると思うけど、君は一人で輝くタイプじゃない。だから、僕らには仲間が必要だ」
「仲間?」
「一人目はそうだな。山田くんがいいかな」
「山田って山田克己? 何で?」
「僕の姿は僕を認識してる人にしか映らない。僕の姿が見えるのは、あの1年3組の関係者に限られるんだ」

つづく
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