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もう嫌だ。何もかも嫌になった。この世界には希望がない。

30代後半の主人公は、テロリストに転進することにした。といって、彼には力もなければ、よく回る頭脳もない。コネもない。口が悪いわけでもない。何ができるか? 何ができるか? できるのは、糞尿を撒き散らすことくらいだった。明らかにこの国のためになっていないであろう人間の生活拠点に忍び寄り、糞尿を撒き散らすのだ。明らかにこの国のためになっていない人間。おまえだ、ということは考えが及ばない……

彼の残念な点は、オッサンという身分を獲得する機会がなかったということだ。きちんとオッサン化ができてない。オッサンとしてどのように振舞えばよいのかがわからないし、また、その義務感をもったこともない。よい年齢の重ね方とはとても言えない。

無論、彼の哀しみの源には、ぼくの哀しみがある。毎日コツコツと文章を書いていれば、分量だけは増えていく。見せかけの成果だけはたまっていく。が、安いメッキはすぐ剥げる。生ゴミをためても食事の代用にはならない。くず鉄を集めても金(キン)には置換されない。

……これ、ダメじゃね?

右を向いても、一人。左を向いても、一人。主人公はどこにも進めなくなってしまった。
どうやら、ぼくは間違った道を主人公に歩ませていたらしい。

この道を行けば、どうなるか? ということを考え考え進んだはずなのに、ミスった。ぼくは髪をかきむしる。HEYHEYHEYに出ていた頃のエレファントカシマシの宮本さんのように(彼からは昭和の小説家の匂いがする)。しょうがない。下ネタテロリスト案は失敗。この1週間よ、さようなら。原稿用紙40枚相当のパートを捨て去ることに決めた。

PCのモニタに視線を戻す。小説の主人公は、テロリストになろうと決心する直前に戻り、「いよいよこれは、自分の人生を自分で終わりにするときが来たのか?」と頭を抱えている。しばらくは何もせずとも生活できる程度の金はある。別にスロットで稼げなくなったわけではない。だけど、しんどい。何一つ心躍ることがない。毎日顔を突き合わしている同業者の顔を思い浮かべるだけで吐き気がする。

あーーーーーーーーと叫びたい。叫んだところでどうにもならない。おれは10代のガキじゃないのだ、と主人公は思う。酒でも飲むか。酒を飲んだところでどうにもならない。それも知っている。おれは10代のガキじゃないのだ。

ぼくが彼だったらどうするだろう?

30代後半の彼にとって、未来はバラ色には見えていない。むしろ、落ちていく自分しか想像できない。体力、気力、持続力、伸び代のなさ、全部、全部下り坂。

すべてが低下するという予感は悪寒をともなうものである。が、彼の悩みとは裏腹に、小説を書くぼくに悲壮感はない。

ぼくの文章はまだ8歳なのだ。8年でこの程度か、と思われるかもしれないが、8歳がウンコチンチンを叫ぶのは至極当然ではないか。事実、洋の東西を問わず、絵画、音楽、文学の別なく、糞尿譚(フンニョウタン)は芸術の一大テーマなのだ。

というのは詭弁であり、もちろん自己弁護である。しかし、オッサンだろうが、何さんだろうが、体力があろうが、なかろうが、できることはある。ぼくはこの小説を通してそのことを証明したいのである。

主人公は空を見上げる。10月の空はどこまでも晴れ渡っていた。

つづく
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