肉体を殺すことが出来ても、魂を殺すことが出来ない者を恐れるな

イエス・キリスト

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生まれて初めて外で喧嘩した日のことを、どういうわけか今でも覚えている。

それは幼稚園のグラウンドにあったジャングルジムか、それに似た遊具の前だった。たぶん休み時間のことで、相手は何人かいて、おれはひとりだった。彼らの中心にいる男子が何かをごちゃごちゃ言っていた。わけのわからない葛藤に突き動かされるように、じゃんけんのグーを模した右手が前に伸びていた。その握り拳は、ジャングルジムの主ヅラをした男の子の鼻にスコンと当たった。とたんに彼は泣き出したのだった。

幼稚園に入る際、園長先生との面接でおれはこう言った(らしい)。
「僕はここで何ができますか?」と。
この世界に生まれ落ちてから、おれはずっと不安だった。この世界で何をすればいいのか? 何ができるのか? 不安に抗うように、物語の世界に逃避した。いつもどこでも物語を読んでもらった。母に、祖母に、たまに父に。彼らが苦笑いを浮かべるくらい執拗に。

この世界はおれにとって都合の悪い世界だった。希望よりも不安の数のほうが多かった。けれど右手を伸ばしただけで世界の勢力図が変わった。世界は変えられるのかもしれない。それは希望のように思えた。しかしおれがジャングルジムの前で得たのは呪いだった。

つづく
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夏休みの宿題2016