自殺が可能なら、その反対だって可能なはずだ。自慰ができるなら、その反対だってできるはずだ。

永里蓮 
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第一章「永里蓮、スロットに出会う」 



「何で東京なん?」という氷野の質問に、「自分探しをせなあかんねん」と答えた。

「は?」

「何しか自分を探さな、おれはどこにも進まれへん」

「はあ?」

「おれな、呪われとう」

「はあ、しか言われへんねんけど」

「ほんまやって」

「意味わからん。で、何でその、あんたの自分探しにうちがつきあわなあかんわけ?」

「おれがおれを探すってことは、氷野が氷野を探すみたいなもんやろ?」
「はあ?」 

「おれ、おまえ、好き。おまえ、おれが好き。ふたりはひとつ」

「やめろや、そのカタコト」

「ちょおホンマ、一生のお願い」おれは言った。

「今、一生ゆうたな?」

「ああ」

「責任取ってくれるんやな」

「責任?」

「ずっと一緒にいてくれるんやな」

「一緒にいたらええやんずっと」

「ホンマやな」

「うん」

「ほなミキモトさんに今日会えんくなったって伝えてくれる?」

「ええけど、何で?」

「うち、そんなん言いづらいタイプやん。ウソつき嫌いっていっつもゆうてるのに」

「わかった。でも、おまえと会ってからでええやろ」

「……なあ、あんたに好きって言われたの、初めてちゃう?」

「そんなことないやろ」

「ある。なあ、蓮、ホンマにうちのこと好きなん?」

「好き」

「どれくらい?」

「これくらい」

「ちっちゃ」

「は? むっちゃでっかいっちゅうねん」

「どれくらい?」

「だからこれくらい」

「これっていう単位がちっちゃいねん」

「ほなおまえはどれくらいなん?」

「びっくりするくらい」

「何でびっくりするくらい好きな人おんのに、ちゃうやつと付き合えるねん」

「それは言わん約束やろ」

「ちょおさ、時間もったいないからはよ支度せえへん?」

「毎日好きって言ってくれる?」

「言う」

「うちに飽きひん?」

「わからへん」

「そんなんやったら行かへんで」

「おれには氷野が必要や。マジで」

「飽きたら傷つけずに振ってくれる?」

「何でそんなこと言うん?」

「ほな飽きんといて」

「うん」

「結婚してくれるんやんな」

「うん」

「ホンマやな?」

「うん」

「四つやで。約束、四つ。くりかえして」

「四つ?」

「ミキモトさんに?」

「連絡する」

「毎日好きって?」

「言う」

「飽き?」

「ひん」

「けっ?」

「たくそわるい」

「何でやねん。けっ」

「……こんする」

「はい。くりかえして」

「ミキモトに連絡する。毎日好きって言う。飽きひん。氷野と結婚して末永く幸せに暮らす」

「ホンマやな?」

「うん」

「ほなホンマに支度すんで。ほんでお金大丈夫なんやな? うち今ピンチやから片道の新幹線代出したら破産寸前やねんからな」

「うん」

「さっきからうんしか言うてへんで。もう一回ちゃんと言うて」

「氷野、頼む。東京来てくれ」

「愛してるは?」

「愛してる」

「しゃあないなあ」

 氷野はおっさんみたいな言い方でそう言った(それは嬉しいときにする氷野の癖だった)。 

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