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天神のパチ屋でバジ絆を打って勝利。その足で飲みに。

気づくと、朝。今日も飲みまくり。ふう。ごちそうさま。年下の店主に別れを告げて店を出る。

路地を曲がると女が倒れていた。その女を起き上がらそうとしている女が言った。
「すいません。この人の知り合いですか?」
 そんなはずないだろ、と思いつつ「いや。違います」と答える。
「じゃあ兄さん、この子起き上がらすの手伝ってもらえます?」女はそう言うと、倒れている女から手を離し、倒れている女のものだろうスマホを手にとって誰かと話しはじめた。
「もしもし、あんたこの子の知り合い? 迎えに来れる?」

どうしてぼくは、こんな早朝に、うら若き女性の体を起き上がらす任務を請け負っているのだろう?

女の体には、力というものが一切入っていない。50キロ程度とはいえ、意識のない女の肉体を起き上がらせるのは至難の業である。と、女は食道を競りあがってくる液体をアスファルトにぶちまけた。女はそのままゴボゴボ吐き続けている。それは人間のふるまいというよりも機械。感情や意志ではなく、ただのポンプ。許容量を超えました。はい。出します。ゴボゴボゴボゴボ……

……ぼくの手に、人間ポンプの出口(入り口でもある)たる「口」から漏れた液体がかかる。やれやれ。酔いが一瞬で醒めたよ。ありがとう。

ふと、こんなシーンどこかで見なかった? と思った。

……ああ、そうだ。「東京タワー」という小説だ。あれはぼくの小説の中の東京、ココはリアルの地、博多。酔う人間はどこでも変わらないのかもね。

状況を整理しよう。

倒れている女をアスカと呼ぶことにする。他意はない。アスファルトに転がっているらだ。

アスカのスマホで誰かと喋っている女をアネゴと呼ぼう。オカン的に面倒見のよい女性は年下だろうとアネゴである。

アネゴのツレはモブ男。アネゴのツレなのだから、押し出しが強いはずがない。人間関係はバランスで成り立っている。

そこに現れたのが酔いどれ寿。その寿とモブ男がアスカの体を支えている。ぼくらの手はアスカの吐瀉物にまみれている。アネゴはやはりアスファルトに転がっていたアスカのハンドバッグから取り出したスマホで電話をしている。が、コミュニケーションがうまく取れなかったのか、通話をやめ、アスカの肩を強めに叩いた。
「姉さん、身分証みたいなのない?」

アスカは喋らない。彼女に意識はない。少なくとも認められない。呼吸はしている。時々、思い出したようにゲロを吐く。

「ふう」と一息吐いた後アネゴは言った。「姉さん、カバン開けるよ。ちぇ、こいつ博多じゃないやん。しかも私より年上かよ。ねえ、姉さん、起きなって。ねえ。……ダメか。ちょっと、モブ男、ケーサツに電話して」

「わかった」モブ男が電話をすること数分。警察官が2人到着する。……こんな早朝なのに。すごいな、日本の警察は。

「あなたたちは彼女の知り合いですか?」若き男性警察官は言った。
「いえ」ぼくは首を振る。アネゴとモブ男も首を振る。
「そうですか。ありがとう。じゃあもういいですよ」

ぼくは立ち上がり、アネゴとモブ男に向かって「俺帰りますね」と言った。
「兄さん、この辺の人?」アネゴが言う。
「ううん」と首を振る。
「旅行者? ありがとね」と言うアネゴに手を振って、歩き出す。目についたコンビニに入り、手を洗い、缶チューハイを2本購入し、外に出た。空が白んでいる。ぷしゅう、とプルトップを開けてぐびぐびと飲む。

飲みながらアスカのことを考える。彼女はまだ23歳で、彼女を年上と言ったアネゴはまだ20歳そこそこなのだ。

やれやれ。ここが日本で本当によかったな、と思う。いや、日本だからこそ、アスカはアスカ的状況に陥ってしまった、そう言えるかもしれない。いずれにしても、彼女を待つ明日は悲惨なものに違いない。フツカヨイに強い人間はいない。それでもぼくらは酒を飲む。飲んでしまう。どうして? わからない。

ぼくは1本目の缶チューハイを空け、近くにあった缶用のゴミ箱に捨て、もう1本の缶チューハイをカコ、と開けた。

わかっていることは、この液体を許容量を超えて体内に取り込んでできあがるのは人間ポンプということ。それはもうわかりきっている。それでもぼくらはアルコールを摂取する。してしまう。どうして? わからない、の無限ループ。

カラスが鳴いている。動き出しつつある巨大な街を、旅行者は缶チューハイ片手に歩いていく。
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