人生には真の魅力はひとつしかない。それは賭博の魅力である。

シャルル・ボードレール

スロ小説♯1
スロ小説♯2

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赤いライオン、或るスロッターの明るい部屋 ♯3


1、ゲーム数だけを見ろ(設定なんて”絶対に”意識するな)。

2、打ち始めと打ち終わりだけ意識しろ。それ以外はどうでもいい。

3、丁寧に打つことを心がけろ。多少スピードが落ちたとしても、取りこぼしはするな。押し順ミスなどもってのほかだ。


 永沢君の手帳の最初のページにはそう書かれていた。それからア行からワ行までの索引があった。

アナザーゴッドハーデス800~ 32やめ

アラジン900~ 20やめ

 みたいな感じだ。顔に似合わずキレイな字だった。つうかさっきはパチンコ、今回はスロット。何なんだよあいつは。これって要はハイエナしろってことか? 何で俺がハイエナなんかしなきゃいけないんだよ。……ちっ。

 スロットコーナーに入ってはみたものの、手帳のボーダーに該当する台は見つからなかった。

 永沢君のもとに戻って打つ台がないことを伝えた。

「ノートは買ったのか?」

「まだだけど」

「言われたことをしろ。コンビニでノートとペンを買って、それから店回りをしてこい。この近辺にはパチ屋が5軒ある。店回りをしながら会員カードをつくれ。それでその5軒を永遠に回り続けろ。いいな」

「……はい」

「おい、スマホ出せ」

「何すんの?」

「……よし。今ラインを登録しておいたから、何かあったらこれで報告しろ。いいか。スロットは足で稼ぐんだ」

「……」

「復唱しろ」

「スロットハアシデカセグ」

「よし行け」

「……はい」

 これじゃあいつのパシリみたいじゃねえか、と思いながら、パチ屋を出た。ありがとうございました。という声が後ろから聞こえた。


 1軒目
 

 ざっと一周してみるが、打てそうな台が見当たらない。こんなんで本当にやっていけるのか? しょうがないので、あいつ(永沢君)に言われたとおり、会員カードをつくることにした。住所、氏名、年齢、めんどくせえなあ、と思いながら記入していく。

「あの、これ」と言って景品カウンターでニコニコ笑いながら立っているお姉さんに渡した。

「はい。ありがとうございます。会員カードですね。身分証はお持ちでしょうか。はい。お預かりします。少々お待ちください」

 しばし待つと、

「こちらにご記入ください」と言われ、カードを渡された。

 ちゃちゃっと名前を記入した。

「はい。登録が完了しました。ありがとうございます」

「どうも」と言って、もう一度店内を回った。やっぱり打つ台はなし。店を出る。


 2軒目
 

 さっきと同じだ。一周して打つ台がなく、会員カードをつくって、もう一周して終わり。店を出る。


 3軒目
 

 ……打つ台発見。と、その前に会員カードをつくっておくことにした。さすがに3軒目となると、行動がスムーズである。住所、氏名、年齢、とスラスラ書いて提出し、「ありがとうございます」というパチ屋店員の言葉に「どうもお」と鷹揚に言った。さてと、スロットすっか。


       777


 これは魔法の手帳ではないか、と思う。この手帳に書かれているゲーム数から打ち出して、この手帳に書かれているゲーム数でやめる。それだけで、たった5台打っただけで、俺の手元には14万8千円が残ったのだった。

 カッカッカ、と笑った。今日一日で会員カードを5枚つくった。何という稼ぎなのか。このペースでいけばあっという間に借金を返せるし、つうか、この手帳さえあれば、別にあいつ(永沢君)と一緒に行動をせずともいけんじゃねえ? と思う。そんなことを思っているうちにスマホがブルブルした。

「どうだ?」

 永沢君だった。

 たとえば各パチ屋に知り合いがいるだとか、何らかの方法で俺の行動を把握されている可能性を考えると嘘はつけなかった。

「5台打って4万8千円勝ち」

「会員カードは?」

「5軒ともつくった」

「よし。もう20時だ。スロットはきりあげてこっち戻って来い」

 指図ばっかだな、と思う。クソが。が、しょうがない。俺は最初のパチ屋に戻ることにした。


      777


 ……ナニ、これ?
 驚愕の光景が広がっていた。黄金騎士を頭上に生やした永沢君の後ろには、ありえないくらいのドル箱が積まれていたのだった。いや、置き切れずに別積みまでされていた。

「何すかこれは!?」

「バカヅキだねえ」と永沢君は言った。つうか、何で「今日は天気がいいねえ」くらいの他人行儀感なんだよ。クソ。待合室でキングダムを読んでいるうちに閉店時間になった。さぞやホクホクの顔で来るかと思いきや、永沢君は無表情だった。

「いくら勝ったんすか」と聞くと、

「32万円」何の感情もこもっていない声が返ってきた。

「……何なんすか」

「何が?」

「何でそんな勝てるんすか」

「たまたま、だよ。玉だけに」 
……オイ。


つづく



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