「パチ屋のなくなった世界で」 

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第四章

消えゆく僕の世界で僕は The world will be lost for change the world.


本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件などとは一切関係ありません。


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世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない。ひたすら歩め。

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ 永井均訳 
 

第十九回


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 13時に起床して、14時30分までにタローズに到着する。まずは前日に発注した商品(酒類、ジュース類、純氷、食品等)の確認と、足りない分の買い物、そしてフードの仕込み。16時から店を清掃し、開店準備。17時から店を開ける。午前2時、店が閉まる。遅くとも3時までにはお客さんに帰ってもらう。そこから掃除、食器洗い、氷割り、翌日分の発注。朝の5時には帰宅。朝食という名の晩飯を食べ、風呂に浸かってストレッチをして就寝。


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 13時に起きて、14時30分までにはタローズに入る。前日に発注した商品(酒類、ジュース類、純氷、食品等)を確認した後、チーフの指示で買い物へ。戻ってきてフードの仕込みを手伝いつつ、開店する準備を整える。17時、タローズ開店。午前2時、タローズ閉店。すべての客が帰った後、掃除、グラスや食器類の洗浄、氷割り、翌日分の発注を済まし、帰宅するのは5時頃。朝食という名の晩飯を食べ、風呂に浸かってストレッチをして就寝。
 

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 くりかえし。くりかえし。くりかえし。同じような作業のくりかえしであることはスロットと同じだ。が、僕はスロットが好きだったのだな、とつくづく思う。好きなことで生活をしていたのだな、と。太郎、おまえは自分の店を持ちたかったのかもしれない。でも、思うのとやるのは全然違うぞ?


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 雑用マン。僕のここでの役割である。梅崎さんは毎晩1時に現れて、カウンターに座る。カウンターが混んでいるときは、テーブル席に座る。そしてチーフのつくるカクテルを3杯飲んで、「お疲れ様でした」と言って帰っていく。普段何をしているのかはわからない。当初は店が終わって仮眠して、開店からパチ屋に行けるな、とか何とか思っていたが、体が疲れてしまってとても無理だった。週に一度の休みの日は、起きると夜で、それはそれでパチ屋に行く気にならなかった。じりじりと時間が過ぎていった。


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 2人が加わったのは、僕がタローズを手伝い始めて2週間が経った頃だった。

「タロさんのお墓で会ったけど、一応、今日が初日なんで、自己紹介」チーフがチーフらしいことを言った。

「サダさん。うち、カクテルだけやったらチーフより数段上なんで、ドリンクのオーダーは全部うちんとこに持ってきてな。よろしく」四条絵里はそう言って、ピックを1本手に持って、氷屋から運ばれて1日経った純氷を割りはじめた。

「今日からよろしくお願いします」大平長政(パティシエ)はそれだけ言うと、巨体を揺らし、厨房に入っていった。

「キョウチョウセーねー」と言ってチーフが笑った。「これやばくね? ま、いっか。つうわけで、サダさんはどうしよっか」

「食器洗い、グラスとボトル磨きっていう俺の得意技を磨く」僕はそう言った。

「はは」とチーフは笑った。「それよかさ、サダさんってさ、計算得意じゃん」

「え?」

「おれ手と口は速いんだけどさ、そっち方面よえーからさ。ってことで、サダさんに金の管理を全部まかすわ」

「全部?」

「そう。おれは表に専念するから、サダさんは裏を支えてほしい。いいかな?」

「裏で金抜いてるかもよ?」僕は意地の悪い感じでそう言った。

「あのさあ、この店の名前知ってる? タロさんが信じてた人が裏切るなら、それはもう最初のコンセプトが間違ってたってことだから、しょうがないっすよ。あのね、あなた、キーマンだからね」

「何で俺がキーマンなんだよ」
 

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 が、人数が揃ったタローズに持ち上がったのは、客が来ないという大問題だった。


つづく


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