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ぼくの名前は巣六斗流という。

巣六斗流。

さて、何と読むか。もったいぶってもしょうがないので、言う。しょうがないので、言う。

すろっとる、である。想像力の足りない親がそんな名前をつけたのである。

スロットル。

暴走族の総長をしていた父の口癖は「全開ブリバリで決めるんで」だそうだ。そんな父は死んだ。

母はいる。暮らしていくには十分な額が父の生命保険で入ったらしく、テレビを見るか、お菓子を食べるか、げっぷ、あくび、あるいはおならをひねるくらいしかしない母ではあるけれど、母はいる。
後は祖父。ぼく。それが、ぼくの家族。

ぼくの小学校の頃のあだ名は「スロット君」である。何だか可愛らしく聞こえるかもしれないが、そういうわけじゃない。当時のクラスの先生が、「君」はデフォ、とわけのわからないクラス内ルールを決めたからだった。

「ルはどこに行った?」とぼくはぼそっとつぶやいた。
「え?」とクラスのリーダー的な頃介は大きな声で言った。「ルはどこに行っただって? だって、なあ。ルって古臭くね? ルはないよな、ルは」
つうかさ、おまえだって変な名前をつけられてるじゃないか、と思ったが、ぼくはそういうことを言わ(え)ない紳士なのだ。ちなみに彼は「コロちゃん」と呼ばれていた。君はどこに行った? 君は? 
要するに、愛称やあだ名がない人間のみ、「君」と呼ばれるシステムだったのだ。残酷さを軽減させようとすると、より残酷になる。これはそんな世界中に存在する人間を人間たらしめる「きれいごと」のいい例だろう。
「スロット君」
「ムタイト君」
「ウルバリン君」
「デウス君」
クラスには、四人の~君がいた。女子は女子で、ララア、ルウルウ、歌と書いてソング、ロビンソン、という謎の名前を持つ女子たちがいたが、彼女たちはなぜか、ルール適用外だった。「ちゃん」はデフォ、ではないのか? ないのだった。大人の事情だか何だか知らないけれど、ともかく。

まあ、そんな話はいい。これは、ぼくと、回胴式遊技機、つまりスロットの話である。

話は少し戻る。

家の押入れには「タロットマスター」という台が眠っていて、小学生になったぼくはそれを引っ張り出して(強烈に重かった)、電源コードをコンセントにつないだのだが、何も起きなかった。

たまたま通りがかった祖父が、「ついに見つけてしまったか」という意味深なセリフを言った。このジジイついにぼけたか、と思ったけど、家庭の中においても人前では猫をかぶるぼくは、にっこり笑って「おじいちゃん。この四角い箱は何?」と聞いた。自分で出しておいて白こいけども、満面の笑みでカバーである。
「スロットル」と祖父は言った。たとえ祖父とはいえ、その名前を呼ばないでほしい、と思ったが、そんなことはおくびにも出さず、ぼくは首をかたむけ、名探偵ナントカ君のように、ふてぶてしくも猫なで声で「おじいちゃん、どうしたの?」と言った。
祖父のしてくれた話はにわかには信じられなかったが、信じる信じないは、ほとんど紙一重であり、人間はどちらかと言えば「信じたい」傾向にあり、それが宗教、信仰心の源である、と小学生ながら世の中の仕組みを知った玄人のような、サトリのような、それでいて小学校でのあだ名はスロット君というぼくは、爺の世迷言を、しかと受け入れることにした。

というわけで、ぼくはスロットをするために生まれてきたのだった。ならばすることは決まっている。パチ屋へゴーである。
が、むろん、その大人の社交場は、小学生がひとりで入れるべくもなかった。
ぼくは機を待つことにした。そして、中学に入り、迎えた最初の夏休み、満を持してパチンコ屋の門を叩くことにした(もちろん、パチンコ屋の門はさーっと開いた)。
「いらっしゃいませ」
ふむ、よきにはからえ、とぼくは思った。くるしうない、くるしうない、ふぉっふぉっふぉ。
が、おかしなことに、警察を呼ばれ、ぼくは補導された。

「狂ってる
  ったくこの国は
       狂ってる」 加藤巣六斗流


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週刊我評第三十八週「擦る阿呆に視る阿呆、同じ阿呆なら擦らにゃsong song」

たまにはいいかな、とビール片手に三十分くらいで書いた傑作がこれである。いや、一時間くらいかかったかもしれない。一時間? そう、どんなバイトでも数百円はもらえる時間である。
一時間の使い道。我ながら、自分の才能にびびる。ぼくは1日の1/24、睡眠時間を除く実質1/16の時間を使って、このような素敵な作品を書いてしまう人間なのである。

やれやれ。

ただ、今まで時間効率というのを一切考えてこなかったが、現実的に時間を使って文章を書く以上、その時間をどう使うかを考えるっていうのは、文章を書くうえでも大切な要素なのかもしれない。

一時間一本勝負、推敲なし、誤字脱字上等、とかも面白いかもしれない。このブログはぼくの壮大なラボラトリーなのだから。特にこの週刊我評というコーナーにおいては。

イイネ、と思っていただけた方、また、少しその小説興味あるよ、という方はどうか以下のボタンを押してくださいませ(スロットル、やる気上がーる)。
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