普通の市バスの運転手(高齢の男性)がなぜか、延々とガイドをしてくれる。
 

「遠回りして、小岩井農場に行きますね。こんなこと普通の運転手はしませんよ」


そりゃそうだ。ぼくは笑う。
 

「ここが、小岩井農場ですよ」と運転手は言う。


ここが、小岩井農場か、とぼくは思う。


ここを想って宮沢賢治は小岩井農場を書いたのだ(たぶん)。


(あいまいな思惟の蛍光 きっといつでもかうなのだ)


(これがじつにいゝことだ どうしようか考へてゐるひまに それが過ぎて滅くなるといふこと)



ぼくは賢治に包まれていた。そしてたぶん、運転手さんも。


”たむぼりんも遠くのそらで鳴つてるし

雨はけふはだいぢやうぶふらない    


ラリツクス ラリツクス いよいよ青く

雲はますます縮れてひかり

わたくしはかつきりみちをまがる”


宮沢賢治 小岩井農場より(1922.5.21)


 春と修羅抱えて銀河バス