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恥ずかしながら、バルセロナのダリミュージアムで、諸橋近代美術館という世界屈指のダリのコレクションを持つ場所があることを知った。

磐梯山の裏、五色沼のそばに建つその瀟洒な建物は、風景と見事に調和していた。


ダリと縁も縁もないこの国に、どうしてこれほどまでのコレクションがあるのか不思議なくらい、ダリ、ダリ、ダリ、である。

中でも目を引くのが、大作「テトゥアンの大会戦」である。ぼくはその巨大な絵画をじっと見つめていた。

その間、何人もの人がその絵画が飾ってある部屋に入っては、出て行った。

ぼくはじっと絵を見つめていた。


と、向こうからの目線を感じ、「は」と思う。

サルバトーレ・ダリがそこにいるのだ(ダリは戦争を描いたこの絵の中に、自身と、それから最愛の妻を紛れ込ませている)。

ぼくは心の中で言う。

「ダリ先輩」

もう一度言う。

「ダリ先輩」

ダリは何も答えない。あのヒゲを尖らして、ただこちらを見ている。
 

「あざす。ダリ先輩。おれ、がんばるっす」ぼくは巨大な絵に背を向けて、部屋を出た。


 やれやれとダリ先輩はジョジョ立ち