「なあ寿、一発逆転なんてないねんで」と彼は言った。

あれは1999年の夏のこと。
彼はぼくが生まれて初めて出会ったスロット生活者だった。 

そしてぼくが、彼の言葉の真の意味を、生活レベル、日常的な行動様式に取り込むまでに、つまり、体得するまで要した月日は10年だった。

10年。生まれたての子犬が(人間に換算すると)およそ56歳になってしまうくらいの年月である。

あのときは、三日連続で負けが込んでいた。
「明日五千枚出ねえと取り返せねえわ」ぼくは吐き捨てるようにそう言った。
そんなぼくに、彼は言った。
「なあ寿、一発逆転なんてないねんで」と。
「コツコツ行くしかないやろ。一発逆転ゆうのは、コツコツ行った結果でしかないねん。わかるか?」
「わからん」

そう、ぼくはまったく理解していなかった。まったく理解していないぼくに彼はこう言った。
 「ま、ええわ、何しかスロットの負けはスロットで勝つことでしか返せへんねんから」

何の因果か、その言葉を聞いた翌日、ぼくは完全なるツキで、4000枚を獲得するのである。何だよ、スロット簡単だな、と思ってしまったのが、運の尽き。さらにその翌日、人生初の万枚を達成する。

その結果、ぼくは彼の言った言葉の意味を理解することなく、ダラダラとスロットを打つ毎日を送ることになった。

ぼくはそのときに気づくべきだったのだ。あるいは真剣に考えるべきだったのだ。彼の言っている言葉の意味を。一発逆転とはどういうことなのかを。

結局、一発逆転とぼくが思っていたその勝ちは、豪遊と連敗で、あっという間になくなってしまった。

そう、人生は、続くのである。

あれから15年が経った。

今ぼくは、彼の言葉をこう解釈している。プラスの行動をコツコツと続けることだけが、勝ち続ける唯一の方法であり、偶然を必然に変える唯一の道である、と。

手痛い敗北から一日。
ぼくは前日の負けの六分の一を取り返すことに成功した。

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