以前よく通ったホールは、月に二度、全六イベントを行っていた。並びは抽選。

当然、ノリ打ち集団が何組も集まってくるわけで、やはり人間というのは、集団になると、普段抑えている「モヤモヤ」みたいなものを解き放つ傾向にあるわけで。


その中にぼくが(心の中で)悪の軍団、と呼んでいるグループがあった。全員二十歳になるかならないかくらいのメンバーで構成されたそのグループには、ひとり、いじられキャラの男子がいた。

実際のところ、彼を中心にそのグループは成立していたといってもいいかもしれない。

いじるというよりも、悪の軍団の構成員たちは、ことあるごとに彼に危害を加えるのだった。言葉で。あるいはフィジカルで。より直截的な表現にすると、殴る、蹴る。まるでその行為がその軍団に所属していることに課せられた当然の義務とでもいうように。


彼は殴られても、罵詈雑言を浴びせられても、言い返さずに、うすら笑いを浮かべるのみだった。その態度にまた腹を立て、構成員たちは彼を殴った。


銀河系の中心にブラックホールがある(と言われている)ように、彼にすいよせられた構成員たちは、彼を担保にグループを存続させていたように見えた。


さて、月に二回のイベントである。

そのホールには顕著なクセがあり、広告規制がない頃だったからホームページで発表され、答え合わせも簡単だった。


抽選にめぐまれたこともあり、ぼくは朝一から、その日の法則に該当するシマ、緑パネルのアイムジャグラーを打っていた。

同じく抽選にめぐまれたのだろう、八台中三台を、悪の軍団が押さえていた。台のデータ、それから他のシマの状況を見る限り、ほぼこのシマで当確だった。


各々ぶん回し体制に入った午後二時頃、ぼくはヒキにも恵まれて、2500枚ほどのコインを得ていた。

しかしぼくの左隣にいるブラックホール氏は、GOGOランプが光るたびにバーを揃えるという苦行中だった。

そんなブラックホール氏を、構成員たちは通るたびに殴っていった。

じゃれているくらいのつもりなのかもしれない。おそらくは、本気で殴っているわけでもないのだろう。

しかしブラックホール氏は、ヒキが弱いと殴られ、シネと言われ、ふざけんな、と殴られ、おまえいらねえから帰れ、と言われ、ヒキよわの分の金払え、と言われ、しまいには、どけ、と言われ、ふっとばされるのだった。


代わって打ったナイフのような顔をした構成員も、ブラックホール氏のヒキを引き継いだかのような展開で、出玉グラフは下降線をたどる一方、そのことでブラックホール氏を攻めるのだった。


その日、ぼくは5000枚超のコインを流し、帰宅した。おそらくブラックホール氏のヒキがこっちに来たのだろう。もちろんオカルトだが、こんなに後味の悪い勝利はあまり記憶にない。


広告規制が入り、イベントが消滅し、その店にはもう何年も行っていない。ブラックホール氏は、今もあの銀河系の中心ですべてをすいこみ続けているのだろうか?


ぼくは今、ひとりで行動している。

時々は寂しいと思う。

でも、誰かに依存するのは嫌だな、と切に思う。ぼくの存在の中心にもあるであろうブラックホールに向けて思う。


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