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役者生活の中で、一日だけスロットをした日があった。
 

2001年(たしか秋)、日本列島が揺れたネタ。そう、サミーショックである。
 

コピー打法(ウィキペディア)

深夜、ずいぶん会っていなかった以前のスロ仲間から電話があった。「すごいネタがある」興奮を隠し切れない声で彼は言った。「すべての小役が、次のゲームでコピーできるんだ」

「は? それって、単純にコイン持ちが倍になるってこと?」

「倍以上、だな」
「メーカーは?」

「サミー」

「たとえば獣王の完全ハズレも?」と聞いた。やはりサミーといって、出てくるのはまず獣王だった。
「できる」と彼は答えた。

「抽選確率が二倍になるってことか。ボーナスは?」

AT中に持ち越す機種ならいける」

「ハードボイルドだったらボーナスもコピーできるってこと?」

「ああ」

「やばくね?」

「やばい」


翌日、車に乗りこみ、ぼくたちはすべてのフラグがコピーできるという夢の打法を求めて出発したのだった。


しかしほとんどの店では、シマが閉鎖されていた。ネタの信憑性の高さが裏付けられたように感じた。

そこで、田舎の方へ、田舎の方へ、ぼくは車を走らせた。そしてついに、家から一時間半ほどの場所で、サミー系の機種が閉鎖されていないホールを発見したのである。


コピー打法の恩恵の強い機種(ネコde小判、ダブルチャレンジ、ハードボイルド)こそ置いていないが、大好きな獣王やインディジョーズ2があった。とりあえずここで実践してみよう。


「いいか、二~三秒くらいかけるイメージでゆっくりレバーを動かすんだ。下げるより持ち上げる感じのほうがやりやすいかな」とかつてのスロット仲間は言った。「後は実践で調整しろ」


了解、と言って、ぼくたちは別々に行動することにした。彼はインディに、ぼくは獣王のシマに進んだ。


まずは普通に打つ。
リプレイが成立する。ゆっくりレバーをつまんでみる。次のゲームもリプレイが揃う。リプレイの確率を考えると、成功かどうか、よくわからない。
普通に打つ。15枚役が成立する。次のゲーム、半信半疑でレバーをつまみ、ゆっくり慎重に持ち上げていく。前のゲームと同じ出目を目押しする。見事成功。15枚が戻ってくる。普通に打つ。15枚役の成立を待ってコピー打法を使う。成功。15枚が戻ってくる。普通に打つ。15枚役の成立を待ってコピー打法を使う。失敗。ん? 何だ、この出目。


……コピー打法を失敗して、ぼくはビッグを引いたのだった。苦笑。


ただ、ここからがこの機種の勝負である。


ビッグ終了後は高確状態への移行が確定していた。設定六以外の獣王でATを引くには、高確状態のときに完全ハズレを引かなければいけないのだった。


祈るようにレバーを叩く。リプレイは無視。15枚役が出たらコピーしておく。失敗もあったが、それでも千円で60回転は回るイメージである。そしてついに、完全ハズレ降臨。次のゲームはミスは許されない。固唾を呑んで慎重にレバーを持ち上げる。

……成功。よし。これで後は抽選をクリアできれば。


高確状態で、完全ハズレ時のAT当選確率は設定1で1/4.66だったから、実質1/2.33ということだ。


頼む。

……
 

演出デンデンデンデン「A

……
 

クリア。無事、サバチャン突入である。投資は1k。できすぎな感はあるが、ともかく、ものすごく久しぶりの勝利に手がかかったのだった。


が、そろそろ、店側も台データの怪しさに気づく時間だった。ぼくの後ろには、店員が張り付くようになった。

そこでぼくは、適当に打ちつつ、重要な場面だけ、コピー打法を使うようにした。


4時間あまりが経過した頃、ぼくの肩を叩く者の姿があった。


「お客さん、それ以上その打ち方したら、景品と交換させないよ」断固たる決意のこめられた店員の言葉だった。


頭上には5000枚超の出玉があった。明らかにできすぎだった。コピー打法もさることながら、ヒキ勝ちである。たぶんスロットをしばらく打っていないぼくに、ヒキの神様がプレゼントをくれたのだろう(このときはけっこうマジでそう思った)。

ういっす、と言いながら、しばらくヒラで打つことにした。


もういいだろう。ぼくはそこで稼働を切り上げて、車の中でかつてのスロ仲間を待つことにした。

わけのわからない不思議な高揚感があった。生きているという感じがした。

つうか、やっぱスロットおもしれえ、と思った。


かつての仲間は30kほど勝ち、戻ってくるや否や、もう一軒行こうぜ、と言った。

「いや、おれはいいや」とぼくは言った。もう充分だった。「行くなら送るよ」

「じゃあ頼むわ」

10軒くらい回ったが、すべてのホールでサミー系の機種のシマが閉鎖されていた。

「飲みいくか」とかつてのスロ仲間は言った。

ぼくたちは地元に戻り、車を置いて、街に繰り出した。


したたかに酔っ払って、お金の大半がなくなった。
翌日起きて、昨日のことは何だったんだろう? と考えた。

夢か幻のようだった。いや、実際そうだったんだろう。

あんな経験はもうできない。忘れよう。すべては夢。幸福な夢。 
さあ、レッスンだ。
 

数年後、再びパチンコ屋に入り浸ることになるなんて思いもしない役者志望のガキは、二日酔いと若干のせつなさを両手に抱え、演技のレッスンに出かけるのだった。

つづく 


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