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「うさぎの穴に落ちて」アーサー・ラッカー

役者の面白みというのは、ここではないどこか、自分ではない誰かに瞬時になれるところではないか。それは言うなれば、人生の別の可能性に触れる、ということではないか。


でもそれは、役者に限ったことではない、役者としての才能のなさを棚に上げてぼくは思ったのだった。


どうやらぼくは、演技では矯正できない心根の持ち主だった。
なぜかぼくは憤慨していた。やりたいことを探す、という言葉に、そもそも矛盾があるのだ。やりたいことは、もうすでにやっているに決まってるじゃないか。


ぼくの場合、それは文章を書くことだった。

しいて言えば、やりたいのは、スロットだった。


その後、本当に人生すべてを文章に賭けようと決めるまでには、幾つもの挫折をくりかえすことになるのだが、ともかく、そのような自己確認の後、ぼくはパチンコ屋でのアルバイトも、演技も、やめることにしたのだった。


アリスはウサギを追って不思議の国に入る。ぼくは獣を追って芸能界という穴に落ちた。そして、その穴から抜け出たと思いきや、気づくと別の穴に落ちていた。
 

この文章を見ている方の中に、やりたいことがあって、何かの穴に入ろうとお思いの方がおられるかもしれない。

だが、そこは、魔窟ぞ。


……少なくとも、魔窟の可能性大、である。
 

永遠に日の目を見ない、日の光を浴びることができない可能性がある。普通の幸せが手に入らない可能性がある。


それでもぼくはこの穴の中の住人として生き、死んでいこうと思っている。

拙文を読んでくださって感謝します。 

短期集中連載 終 

poti. 寿


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